フィギュアスケートのアレコレ

フィギュアスケートのアレコレについて語るブログです。

【PCS特集】 相場高騰の歴史を探る (1)

相場」というのもどうかと思いますが、ロシア選手権アイスダンスの放送で、解説の藤森美恵子さんもあるカップルのPCSに対し、「相場より高い!」とおっしゃっていたので…まあいっか。その意味合いは当然異なるでしょうけど。
しかしその藤森さんが「ダンスのような高いスコアは、シングルでは難しい」といつかどこかでおっしゃっていた記憶がある(…自信はない)のですが、いまや男子もそれに追いつかんばかりの勢い。もっとも、ダンスはさらなる高みへと昇っちゃったけど…。今回はそのPCS相場高騰の歴史について、少しばかり触れてみたいと思います。

「コンポーネンツの点数の出し方についてはジャッジもまだ慣れてないところもあるので、もっと勉強しなくちゃいけないところはあります」
(www.oaj.jp/interview/04_hiramatsu/より引用)

これ何遍引用すんねん!というぐらいしている平松純子さんの言葉(トリノ五輪後)ですが、その本格移行後の2シーズンは、プルシェンコ選手が「別格」という感じだったでしょうか。各項目のバランスについては、いまより(さらに)平坦なスコアが多い印象です。
それから、こんな例(04/05シーズン)も。

25.95 5.30 4.95 5.30 5.30 5.10 スケートアメリカSP
60.80 5.95 5.85 6.20 6.35 6.05 スケートアメリカFS
28.95 5.70 5.65 5.80 5.90 5.90 ロシア杯SP
60.60 6.00 6.00 6.05 6.15 6.10 ロシア杯FS
32.50 6.57 6.11 6.57 6.57 6.68 四大陸選手権SP
68.02 6.86 6.64 6.79 6.86 6.86 四大陸選手権FS
65.20 6.65 6.35 6.45 6.50 6.65 世界選手権予選
34.71 6.96 6.71 7.04 7.00 7.00 世界選手権SP
70.56 7.07 6.96 7.04 7.07 7.14 世界選手権FS

こういう風に数字だけ抜き出しちゃうと、またあまりよろしくないかもしれませんが、これはバンクーバーの金メダリスト・ライサチェク選手の得点。このように、1シーズンかけてこれだけ駆け上がっていく選手もいる、ということですね。
では、プルシェンコ選手が抜けた06/07シーズン以降はどうか?すごく落ち着いた相場に見えちゃいますよね、いまから見ると。でも、たまにこんな興味深い大会もあるんですよ。

57.90 5.90 5.45 6.00 5.80 5.80 Marc Andre CRAIG
51.30 5.55 4.90 5.10 5.15 4.95 Geoffry VARNER
56.10 5.75 5.10 5.90 5.65 5.65 Jamal OTHMAN
75.20 7.85 7.10 7.55 7.50 7.60 Stephane LAMBIEL
54.30 6.00 4.75 5.65 5.35 5.40 Sergei VORONOV
64.60 6.65 6.10 6.55 6.45 6.55 Shawn SAWYER
71.50 7.95 6.45 7.20 7.20 6.95 高橋大輔
59.70 6.50 5.15 6.20 6.10 5.90 Vaughn CHIPEUR
60.30 6.35 5.45 6.40 6.05 5.90 Tomas VERNER
62.20 6.60 5.80 6.25 6.30 6.15 Yannick PONSERO
72.10 7.35 6.75 7.20 7.45 7.30 Johnny WEIR

これはスケートカナダ(06/07)男子フリーのスコア。ちなみに、下が高橋選手の詳細。

7.75 7.75 7.75 8.00 7.75 7.75 8.00 8.50 8.00 8.25│7.95
7.25 7.50 7.50 5.50 7.00 6.75 7.50 7.25 5.00 4.75│6.45
7.00 7.50 7.50 6.00 7.25 6.75 7.75 7.75 7.00 6.75│7.20
7.50 7.75 7.50 7.00 7.25 7.25 7.50 8.25 6.50 6.00│7.20
7.50 7.50 7.25 6.00 7.25 7.00 7.75 8.50 6.00 6.75│6.95

うーむ…12月のファイナルのスコアもびっくり?まあこんな感じに一部だけを切り取っていたらキリがないし、当然この頃といまのプログラムでは、比較になりませんよね。時代も違えば氷も違えばジャッジも違えば…とそれこそキリがないのだけど。時代とか、5年前の話なんですけどね。でも、その5年が実にデカい。
一つPCSに関連して非常に大きかったと思われるのが、ウェルバランスの削減08/09シーズン)でしょうか。フリーのスピンが4つから3つに。選手にとっては要素が一つ減ることもさることながら、そのスピンに入るために減速し、また次の要素に向かうために加速する、その一連の負担が減ることが、とても大きいのだとか。

このルール改正の提案理由が、"to decrease the number of elements of the Well Balanced Program and leave more time for Transitions."。すなわちトランジションの充実、ひいてはコンポーネンツ全体にプラスになるような効果が期待されたわけですね。そのシーズンにチャン選手や小塚選手、アボット選手が(さらに)飛躍したのは、たまたま重なったとはいえ、面白いなと思います。
「いまはエレメンツのつなぎをきちんとやっている選手とやっていない選手には差をつけるように、ISUがジャッジに指導している時代」という藤森美恵子さんの言葉が掲載されたのは、このシーズン後に出版された雑誌(『フィギュアスケートDays vol.9』)でした。実際は「そうか?」と思うことも多々あるのですが…。

フィギュアスケートDays vol.9フィギュアスケートDays vol.9
(2009/04)
不明

商品詳細を見る


同じくこのシーズン、PCSとは直接関係ありませんが、いわゆる(技術要素の)「プラスGOEのガイドライン」が明示されました。先日のユーロの解説の中で、岡部由起子さんがおっしゃっていましたが、それまではどのような場合にプラスを付けてよいのか、ジャッジの間にも迷いがあったそうです。何せそれまで(旧採点)は、減点することしかしなかったわけですから。ジャッジにとって「減点加点方式」への切り替えは、そう簡単なことではなかった、ということですね。しかしそれにより、よいものにはよい点数を出しましょうと、そういう方向性がより明確になった。それはまたPCSにおいても同様である、と受け止めるのが自然な流れなのかなと。

「新採点システムに変更直後は、無理やりでもジャンプを着氷し、ギリギリでもレベル4がとれていれば、GOE、演技構成点とも高評価が出がちだった。 しかし『いいと思ったものに点を出すように』と言い続け、そのためのDVDを作って指導してきた結果、最近はレベルは低くても質が良ければGOEは出るし、技でミスしても、それを演技構成点と切り離して得点を出すようになってきている」
(平松純子さん。www.nikkei.com/sports/column/article/g=96958A88889
DE3E2E1E4E3E0E0E2E2E0E2E5E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E0E2E6E0E2E3E2EAEAE2E2より引用)

これも何遍引用すんねん!ですが、まあそういうこと(らしい)です。とにかくISUとしては、それがこのシステムの本来の趣旨なのだから…ということで、いろんな環境を整え、指導を繰り返し、ジャッジも(ようやく?)徐々に慣れていったと。また岡部由起子さんも関連書籍の中で、「良い演技には、『それに相応しい点数を!』という流れになってきてい」るとお話されています。PCSの各項目についても、「ジャッジも皆、もっと勇気を持って点数をつけるべきと話してい」る、(アセスメントをもらうこともあるが)「自信を持って自分の思う点数を出すべきと」(カッコ内は『寝ても覚めてもフィギュアスケート』より引用)。

寝ても覚めてもフィギュアスケート寝ても覚めてもフィギュアスケート
(2011/03/10)
D&Nライターズクラブ

商品詳細を見る


また09/10シーズンには、すべての要素のGOEプラスのガイドラインに「音楽構造に要素が合っている」という条項が追加され、これも間接的にコンポーネンツの評価につながるといえばつながる、および何を重んじるか?という評価の方向性が窺えるといえば窺える改正の一つなのかなと。
さらに10/11シーズンにはSPのウェルバランスも削減され("to have less pressure on the Skaters and leave more time for Transitions")、フリーにコリオステップが導入された。これもコンポーネンツ的には、とても大きかったのではないかと思います。

ただ、男子のコリオステップに対し、女子のコリオスパイラルはそこまで上手く機能していないような気がするんだよなー。まあ比べるのも何ですし、男女とも選手によって濃淡あるとは思うのですが。でもペアのようなスケールの大きさがあれば、まだ機能しやすいと思うのだけど、女子の場合はもう少し縛りがないと、ちょっと弱くなっちゃうのかなと。しかしそれをいえば、コリオスパイラルがコリオスパイラルでなくなっちゃうわけで…。難しいなあ。繰り返しになりますが、女子にも効果的に使っている選手はいるんですけどね。でも全体的な印象としては、そう感じるかなと。少数派かもしれませんが…。

また脱線したところで、次回に続く!
関連記事
スポンサーサイト
[ 2012/02/01 21:02 ] PCS関連 | TB(0) | CM(2)
勇気をもって、自信を持って
↑で30年くらい前に描かれた『パートナー』という競技ダンスの漫画を思い出しました。やっぱり採点競技なのですが、ある権威ある大会にはジャッジに実力者が多く、自分の採点に自信があって、さほど実績のないカップルでも良い演技だと点数(順位点でした)が出るのだとか。元世界チャンプのジャッジが若手の主人公にめちゃ良い点をつける場面がありました(笑)
普通の人(ジャッジが普通じゃ困るのですが)なかなか最初に良い点をつけるのって勇気がいるんですね。では、最近はみんな自信満々って感じなのかな?
[ 2012/02/02 16:27 ] [ 編集 ]
こんばんは!
りーさん、こんばんは。

> では、最近はみんな自信満々って感じなのかな?

うーん、どうなんでしょう?皆さんがそれぞれに自信を持って、信念に基づいてそうなるならいいのかなと思うのですが、乗り遅れたら大変!みたいな感じの方がおられるとしたら…いないか。うーん、どうなんだろう。まだ続きがありますので、よろしければご覧になってください。

タロウ
[ 2012/02/02 23:45 ] [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL