そう何度も、同じシーズンにミスのないフリーが見られることはないだろう。そう思いつつ、しかしとても美しいプログラムで、その演技もとても美しいもので、期待せずにはいられなくて…という次第だったわけですが、やってくれました。誰のことかといえば、もちろん
パトリック・チャン選手の話です。強かった。そしてやはり、美しかった。
フリーに強いパトリック。でも、それって実は…というほどのことではないのだけれど、オリンピックのシーズンもそうだといえば、そういえないこともなかったのだよな。それがなぜ…というところに行き着いてしまうのだけど。それはさておき、ドラマチックな逆転劇という結果もついてきて、すごく胸を熱くさせてくれる優勝でした。
あらためて、本当にいいフリー(プログラム)だと思う。音楽の選択もいいし、そのつながりもきわめて自然で、息を整えつつ、一つの表現的な見せ所にもなっているスローパートもすばらしい。
なんかこう、見ていてグッとくるんすよね、このフリーは。心が洗われるようで、それでいて奪われるような力強さもあって。なんかもう、大変だ。
静寂も躍動も、まるで飛んでいるかのように、加減速の負担も感じさせず、そこから生まれる表現の多様性を、その可能性を現実のものとして提示するスケーティング。素人目にも、ああ、本当にすごいんだ、この選手は、と思わせてくれるような。言わずして思わしめるそのすごさのすごいこと。なんじゃそりゃ。
とにかく、僕がいいたいのは、こういう演技が見られて心から幸せだ、ということです。だからこの競技が好きで、見るのやめられないんだよなって思う。こういう演技を見せられると、いつも。その存在の、なんとありがたいことか。
そして、技術点では後れをとることがあっても…とも、思わず思ってしまう。思わず、です。それプラス、難しいことだとはわかりながら、各ジャッジ、各項目で最高の点数が積み上がった先には、そういう「境地」があるはずで。
実際にあるものだろうか、と思い、見られるものなら見てみたい、という思いもあるその場所に、いちばん近いのは、いちばん近くにいてほしいのは、いまの僕にとっては、パトリック・チャン以外の選択肢は考えられないのですが。
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